僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「凪~! おっはよ!」

「あ、おはよー」


あたしは黒いローファーを下駄箱にしまい、久美(くみ)と他愛ない話をしながらクラスへ向かった。


入学してまだ2週間程度だけれど、中学生活はそれなりに楽しい。


「凪っ! はよ!」


別のクラスの男子に挨拶され、適当に返す。すると、教室へ入りながら久美がにやにやと口の端を上げた。


「ねぇーアイツってさぁ、絶対凪のこと好きだよね」

「はぁ? まっさか」

「この前も先輩に声かけられてたじゃん。凪ってモテるよねー」

「別に、ただの友達じゃん」


いいなぁ~と、全く人の話を聞かずに席へ向かう久美に溜め息をついて、あたしもそれに続いた。


モテると言われて嫌なわけじゃないし、そこそこ嬉しいけど、いまいちピンとこないのも確かだ。


恋愛に興味がないのかと聞かれれば、全くないと言うのは嘘になる。むしろ、してみたいと言うのが本音だったりする。


「ねーねーっ、聞いた!?」


別のクラスの男女が付き合った。

そんな噂をクラスメイトから聞いて、数名で作られた女子の輪が沸き立つ光景を何度見ただろう。


「えーっ、早くない!?」

「いや、でも小学から一緒だったらしいよ」

「あー、そうなんだー。えー、でも悪いけどちょっと無理」

「無理って何! どっちが?」

「や、彼女のほうっしょ」

「若干モサいよね」


くすくすと笑いながら、どちらかと言えば彼氏に不釣り合いな感じがする彼女を笑うクラスメイト。まあ、あたしもそう思うけど。


友達ならまだしも、関わったことのない人の恋愛事情なんて興味ない。それはみんなも同じだろうと思う。


ただ話題のネタにしか過ぎないことが、みんなの小馬鹿にした態度で分かる。
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