僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「でもいいなー、あたしも彼氏とか欲しい」
そう言うと、「だよねー」と賛同を得た。
つい先月までは小学生だったのに、どうして中学生になったというだけで大人びた気分になるんだろう。
着慣れない制服も、高まった異性への興味も、自らを綺麗に見せたいという美意識の向上も、嫌ではないけど。
「てか、凪の髪超サラサラ!」
「まっすぐだよねー。縮毛?」
「いや? ヘアアイロン」
胸あたりまである黒髪を2人の友達が触りだすと、話題は髪の毛の話になっていった。
癖っ毛だとか、縮毛をかけてるとか。あの整髪料がいいとか、あれはダメだとか。それぞれの知識を持って話す内容は、時間が経つのも忘れて楽しめた。
「お前らなー。予鈴鳴ったら座ってろって言ってんだろー」
担任は教室に入るなりそう言って、あたしは友達の何人かとくすくす笑いながら席へと戻った。
窓際の前から3番目。いい席とは言えないけど、窓から見える桜はそれなりに好き。
ホームルームが終わると、ガタガタと席を立つ音で再び教室は騒がしくなる。
「なー、昨日ドラマ観た?」
「んー? 昨日の? 観たよ、面白かった」
男子でも恋愛ドラマ観るのか。隣の席の優太(ゆうた)に話しかけられ、座ったまま向かい合う。
そのうち、ヒーローと当て馬っぽい俳優どちらがタイプかという話題になった。
「あたしは当て馬だなー。あのまま主人公とくっつけばいいのに。ヒーローより断然優しいじゃん?」
「マジ? 凪ってあっちのがタイプ? 超意外」
「何よ意外って。あたし、俺様苦手なんだよね」
「あー、凪って気ぃ強そうだもんなーっ」
「それって老けてるって言いたいのかなぁ~?」
「バッカ、なんでそうなんだよ!」
焦ったような顔にけらけら笑っていると、あたしの名前を呼んだ久美が近付いてくる。