僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「なんだよ久美、連れションか」

「やだぁー! 言葉汚ーい!」

「はぁ!? 汚くねぇだろっ」

「凪、行こー」

「あ、マジでトイレ?」

「違うーっ!」


じゃあなんなんだろうと思いながら久美に引っ張られ、ちらほらと生徒のいる廊下に出る。


「ねぇ、どうしたの?」

「アイツってさ……凪のこと好きだよね!」

「……」

またそれか! と、ガクッと肩を落とすと、久美は構わずに話し続ける。


どうやら優太は他の女子には冷たいだとか、あんなに話すのは凪だけだとか。


「いや、まあ……よく話しかけられるけど。あたしも話しかけるし、隣の席なんだからそれがふつうじゃん?」

「あたし、別に隣の席の奴と仲良くないもーん!」


……ああ、久美の目には仲がよく見えるのか。


「ねねっ、凪はさ、優太有りなの!?」


恋愛対象として?


うーん、と悩む。こともないくらい、恋愛対象であることは明確だった。


ぶっちゃけ、もしかしてあたし好かれてる?と、思わなくもない。


――だけど。


「なくはないけど、有りにするにはちょっと足りないかなー」

「えっ! なんでっ、かっこいいって言われてるのに!」


まあ、そこそこかっこいいとは思う。


「びみょー……に、タイプとズレてんだよねぇ」

「えぇ? 凪のタイプって誰だっけ」

「パパみたいな人?」

「うっわ! そっか、凪のお父さんって若いんだよねーっ。えーでも父親がタイプなんてヤダー。あたしだったら絶対無理、あんな親父~」


ウエッと舌を出す久美に笑って、ちょうど予鈴が鳴ったので教室に戻る。


いったいなんのために廊下に出たのか……そう思いながらも、人の恋路まで気にする恋愛体質の久美はかわいく感じた。
< 481 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop