僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「なんだよ久美、連れションか」
「やだぁー! 言葉汚ーい!」
「はぁ!? 汚くねぇだろっ」
「凪、行こー」
「あ、マジでトイレ?」
「違うーっ!」
じゃあなんなんだろうと思いながら久美に引っ張られ、ちらほらと生徒のいる廊下に出る。
「ねぇ、どうしたの?」
「アイツってさ……凪のこと好きだよね!」
「……」
またそれか! と、ガクッと肩を落とすと、久美は構わずに話し続ける。
どうやら優太は他の女子には冷たいだとか、あんなに話すのは凪だけだとか。
「いや、まあ……よく話しかけられるけど。あたしも話しかけるし、隣の席なんだからそれがふつうじゃん?」
「あたし、別に隣の席の奴と仲良くないもーん!」
……ああ、久美の目には仲がよく見えるのか。
「ねねっ、凪はさ、優太有りなの!?」
恋愛対象として?
うーん、と悩む。こともないくらい、恋愛対象であることは明確だった。
ぶっちゃけ、もしかしてあたし好かれてる?と、思わなくもない。
――だけど。
「なくはないけど、有りにするにはちょっと足りないかなー」
「えっ! なんでっ、かっこいいって言われてるのに!」
まあ、そこそこかっこいいとは思う。
「びみょー……に、タイプとズレてんだよねぇ」
「えぇ? 凪のタイプって誰だっけ」
「パパみたいな人?」
「うっわ! そっか、凪のお父さんって若いんだよねーっ。えーでも父親がタイプなんてヤダー。あたしだったら絶対無理、あんな親父~」
ウエッと舌を出す久美に笑って、ちょうど予鈴が鳴ったので教室に戻る。
いったいなんのために廊下に出たのか……そう思いながらも、人の恋路まで気にする恋愛体質の久美はかわいく感じた。