僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「あ! ねぇ凪、今日の放課後さ、新しくできた雑貨屋さん行かない? かわいいペンとかアクセいっぱいあるんだって~!」

「へー! 行きた……あ、ごめん今日ダメだった」

「えぇ~っ、何で!?」


あたしの腕を掴んだ久美をに眉を下げる。


「ごめん、今日パパが早く帰ってくるみたいで、夕飯の準備しないと」

「えーいいじゃん、出前で」

「久しぶりだから、ちゃんと作りたいのっ」

「凪のファザコ~ンッ!」

「ぎゃー! ヤダもう、やめてよっ! ほんとごめんて! 明日行こ?」

「えー……んー、分かったぁ」


渋々頷いてくれた久美に口の端が上がって、かわいさから癖っ毛をぐちゃぐちゃに撫でると、怒られてしまった。


「夜、メールするから」


乱れた髪を直す久美に笑いながら言うと、久美は今日付き合えないあたしを咎めるように口を尖らせる。


「お父さんに構ってあげなくていいの~?」

「だから! あたし別にファザコンじゃないって! ごめんって!」

「嘘だよ、分かってる~。仲いいんだもんね、お父さんと」


焦ったような顔を見て、久美は満足したのかあたしの二の腕をぽんと叩く。


「えぇ……別に仲良くないけど。最近親父くさいし」

「何言ってんの! あんな若いお父さん羨ましいんですけどー!」


……そんなもんかな。


若いということは分かってるけど、あたしはきっと、サヤが若くなくても今となんら変わらない気がする。


「ま。パパは若いだけが取り柄だと思うよ」

「いつも優しいんでしょ? それに何よりイケメンじゃん!」


あたしは曖昧に笑い返して、久美と教室に入った。
< 482 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop