僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「あ! ねぇ凪、今日の放課後さ、新しくできた雑貨屋さん行かない? かわいいペンとかアクセいっぱいあるんだって~!」
「へー! 行きた……あ、ごめん今日ダメだった」
「えぇ~っ、何で!?」
あたしの腕を掴んだ久美をに眉を下げる。
「ごめん、今日パパが早く帰ってくるみたいで、夕飯の準備しないと」
「えーいいじゃん、出前で」
「久しぶりだから、ちゃんと作りたいのっ」
「凪のファザコ~ンッ!」
「ぎゃー! ヤダもう、やめてよっ! ほんとごめんて! 明日行こ?」
「えー……んー、分かったぁ」
渋々頷いてくれた久美に口の端が上がって、かわいさから癖っ毛をぐちゃぐちゃに撫でると、怒られてしまった。
「夜、メールするから」
乱れた髪を直す久美に笑いながら言うと、久美は今日付き合えないあたしを咎めるように口を尖らせる。
「お父さんに構ってあげなくていいの~?」
「だから! あたし別にファザコンじゃないって! ごめんって!」
「嘘だよ、分かってる~。仲いいんだもんね、お父さんと」
焦ったような顔を見て、久美は満足したのかあたしの二の腕をぽんと叩く。
「えぇ……別に仲良くないけど。最近親父くさいし」
「何言ってんの! あんな若いお父さん羨ましいんですけどー!」
……そんなもんかな。
若いということは分かってるけど、あたしはきっと、サヤが若くなくても今となんら変わらない気がする。
「ま。パパは若いだけが取り柄だと思うよ」
「いつも優しいんでしょ? それに何よりイケメンじゃん!」
あたしは曖昧に笑い返して、久美と教室に入った。