僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「いやぁ~。おいしかったぁ」
夕飯を食べ終わり、食器洗いを並んでする。サヤが洗って、あたしが拭く係。
「凪は料理も掃除もできて、家事のプロだね」
「サヤが何もできないからでしょ」
「……ん? ごめん、聞こえなかった」
「サヤが何もできないからでしょ」
「2回も言わなくても!」
聞こえてんじゃん。
そう言わないまま、しょげるサヤを横目で見つつ、全ての食器を拭き終わった。
「でも凪、たまには放課後遊びに行ってもいいんだよ?」
手を拭いていると、サヤは少し申し訳なさそうに眉を下げて言う。あたしはその胸中を悟っておきながら、笑顔を見せた。
「遊んでるよ。明日も久美と遊ぶし」
「そう? ……なら、いいんだけど」
困ったような、心配したような、そんな力ない笑顔。
――あたしは小さい頃から、それこそサヤと住み始めた頃から、一緒にいられる時間は限られていた。
お母さんが亡くなってから、19歳のサヤは3歳のあたしを引き取って、会社を立ち上げて。
幼かったあたしは、サヤといられないことが理解できなかった。
期待された将来を捨てて、両親と縁を切ってまで、親戚に何を言われてもあたしを引き取る道を選んでくれたサヤ。
自分とあたしを養うために、寝る間も惜しんで働いてくれていたのに。
寂しさはどうしようもなくて、随分わがままを言っていた気がする。
それでも、サヤはなるべくあたしとの時間を作ってくれた。
保育所でも幼稚園でもなく、今より小さい会社に連れてってくれたこともあったし、疲れていても、あたしが寝付くまでそばにいてくれたこともあった。
大きくなるにつれてあたしはそれを理解して、逆に役に立たなければと、サヤの背中や時たまくるお手伝いさんらしき女性の仕事を見ながら家事を覚えた。
サヤが帰ってきても何もしなくて済むように。ゆっくり休んで、疲れが和らぐ環境を作ることが、あたしの目標だった。