僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「腹減んねー?」
「……さっきお菓子食べてたじゃん」
テーブルを挟んで、祠稀の真正面。そこに凪を座らせて、俺は隣に座る。ちょうどよく有須がココアを持ってきて、全員がリビングにそろった。
……変な感じ。いつもと変わらない風景なのに、雰囲気が違う。
当たり前か。
今日は、集まるわけが違う。
「はーあ」
突然、祠稀が大きな、わざとらしい溜め息をついて。集まった視線に祠稀は妖艶に微笑む。
「変な空気。俺、耐えられないから話していい?」
隣の凪が微かに震えたのに気付きながらも、俺は頷く。
「うん」
祠稀はテーブルに置いてある灰皿を引き寄せて、煙草を取り出しながら話し出した。
「まあ、別に大したことじゃねぇぞ? 彗や有須と同じかっていったら、別もんだと思うし。俺は、現在進行形で悩まされてるわけじゃねぇから」
キンッ、とジッポ独特の音がリビングに響く。祠稀が咥える煙草の先端が赤くなっていく。
「俺に秘密があるとしたら、それは過去の話。それだけは分かっといてほしいんだけど」
「……今は何もないの?」
有須の問いに、祠稀は紫煙を吐き出す。
「今も何も、俺はもう、ここに住んでるわけだからな」
祠稀のよく分からない答えに、俺も凪も有須も同じ表情をしたんだろうか。祠稀がおかしそうに鼻で笑った。