僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「親父だけならまだしも、兄貴からもって笑うしかなくね? 母親は見て見ぬふりっつーか、まあ、大人しいタイプだから」
灰皿に圧し潰された煙草を、ぼんやりと見つめた。
ねぇ祠稀。なんで、笑ってられるの。
「……火傷」
じっと黙って聞いていた凪が、泣きそうな声を出した。俺は凪を見てから、祠稀の左肩にある火傷の存在を思い出す。
「根性焼きは……?」
祠稀を見るとやっぱり笑っていて、左肩を押さえながら、目を伏せた。
「兄貴にやられたんだよ。根性がないって言われて、親父の煙草で、親父の目の前で」
息が、苦しい。
目頭が、熱い。
祠稀、だってそれは……根性試したんだって、笑ってたじゃん。
俺を励ますように見せたくれたそれが、家族から受けた傷……?
「言っとくけど、俺は我慢できると思ったから抵抗しなかった。こんなん、たいしたことじゃねぇよ」
「……っ」
小さな嗚咽に、俯きかけた顔を上げる。同時に、有須の苦しさが心に重く圧しかかった。