僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「俺んちは息苦しくて、堪ったもんじゃねぇ」
祠稀。何も、どこも、過去には思えないよ。それは祠稀が、無理やり過去にしただけじゃないの?
何も解決してないじゃんか……。
「まあこんなもん? 俺の、秘密」
有須はずっと俯いたまま、泣いているようだった。俺は新たに煙草を吸う祠稀を眺めながら、「話してくれてありがとう」と言った。
「現在進行形じゃなくて悪かったな」
なんて悪戯に笑う祠稀は、俺と有須の時みたいにはならないから安心しろ。と、遠まわしに言いたいんだと思う。
自分の傷を人のために笑って使える祠稀は、どれだけ強いんだろう。どれだけ、我慢したんだろう。
俺はただ、強がりじゃなければいいと願った。
「……風呂入ってくるわ」
まだ少ししか吸ってない煙草を、灰皿で折り曲げてから立ち上がった祠稀。それに気付いた有須が、慌てて涙を拭って立ち上がる。
「……今準備するねっ」
「おー。手伝う」
祠稀が過去だと言うなら、有須はそれを信じるんだろう。
いつもと変わらないように、ぎこちなくならないように、ふたり並んで廊下に出ていく様子を黙って見送る。
隣に座る凪は、虚ろな瞳でドアを見つめていた。その瞳からは、絶え間なく涙を流していたけど。