僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――――…
「今日から教育実習生として、1年生の数学を担当してもらう。日向 枢稀(ひゅうが すうき)先生だ」
朝のHRが終わる直前。1年の各クラスを回っていたんだろう。スーツを着た枢稀が俺のクラスに挨拶に来た。
長身に、癖のない首にかかる程度の黒髪。フレームのない眼鏡の奥で、人の善さそうな瞳を細めている。
久々に見たけど、全く変わらない。昔っから、何ひとつ変わりはしねえ奴だけど。
「初めまして。まだまだ分からないことだらけなので、皆さんと協力しあえたらいいなと思います。2週間、仲よくしてくださいね」
女子が頬を染めてる中、俺は鼻で笑ってやりたくなる。
コイツの本性なんか、ただのムッツリだぞ。弱くて、汚らしい、ただの親父の忠犬。
「先生、何歳ですかー!?」
……うわ、出た。
女子のミーハーな質問にうんざりしつつ、俺は来るだろう担任の言葉を待った。
「騒ぐな女子! 日向先生は21歳で、T大の3年生だ」
すごーいとか騒ぐ女子を黙らせたのは、次に発せられた担任の言葉だった。