僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


テーブルを中心に、彗はカーペットの上に腰かけ、祠稀はソファーに座っていた。そしてL字型のソファーの1人席に、早坂先生が。


誰も取り乱してはいないけれど、空気が重かった。


「……こんばんは。お久しぶりです」


竦みそうになる脚を無理やり前に出して、ソファーの前で立ち止まる。


「その節はどーも。……着替えてきたらいいんじゃない?」

「そうしろよ有須。話はそっからな」


マフラーを取り外すあたしに早坂先生と祠稀がそう言って、お言葉に甘えることにした。


「有須」


……姿を見るだけで、声を聞くだけで、胸が苦しくなる。


「……ん?」


数秒置いて返事をすると、足音通り彗があたしの隣に立った。


泣いてはいけない。今、彗がここにいる意味を、彗の気持ちを考えるなら、あたしが泣いちゃダメだ。


「……飲みもの、いつものでいい?」


彗はちゃんと、自分の脚で立っているんだから。


「うん……ありがとう、彗」


目を細めて笑うと、彗も微笑んであたしの頬に軽く触れた。


「冷たい」

そう言ってキッチンに向かう彗の背中からゆっくり視線を外し、自室へと向かう。


ドア1枚隔てた先は完全にあたしだけの空間。リビングへ繋がる道を遮断すると、閉じたドアの下で蹲ってしまった。


……苦しい。


今はその感情に限る。若干の息苦しさから咳き込み、空気を求めて顔を上げた。


「――…」


雪だ。


朝から開けっ放しのままになっていたカーテンは、窓から見える景色も隠さない。


電気もつけない部屋は真っ暗のはずなのに、ぼんやりとした明るさが視界に拡がっていた。


引き寄せられるように窓へ近付く。


ふわり、ふわりと空から舞う白い雪。その小さく儚げな様子は綺麗とさえ思うのに、明日の朝には憂鬱なものでしかなくなっているんだろう。


降り積もった雪はきっと、簡単に溶けはしない。

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