僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「―――だいたい分かった?」
着替えを終えてリビングに戻ると、あたしは祠稀から一通りの説明を受けた。手紙やお金のことも、彗のことも、凪が誰にも頼らず出て行ったことも。
「えと、うん……だ、大丈夫」
「ほんとかよ」
一気に詰め込まれすぎて、ちょっと頭がグラグラするなんて言わなくてもお見通しだろうな。
「えっと、それで今は……威光の人たちがいろいろ調べてくれてて、早坂先生とは予想……議論?してたってことだよね?」
「そう、凪がどこに向かう可能性が1番高いかってな」
早坂先生が言うには、旭さんの実家、祖父のもとへ行くようなことはまずないらしい。
「その可能性が高いとこはどこなの……?」
祠稀と早坂先生がお互い目配せをして、早坂先生が先に口を開いた。
「一夜限りの関係かなって結論」
「……」
「たいして親しくもない祖父にあれこれ嘘を並べるより、どうでもいい奴を利用したほうが簡単だって話」
「そ、それ、は……」
「逆ナンでも出会い系でも、なんだって有り。日替わりでいろんな男と過ごすだろうってことだよ」
事細かに説明してくれなくても分かるけど、自分が経験したことのないものを、なるほどそうですかとは受け入れ難い。
「有須と俺は放課後に凪と過ごすことが少なかったけど、彗が言うに、男の影なんてなかったんだとよ」
「……俺と過ごしてなかった時は、早坂先生と会ってたし……あとはチカとか遊志先輩くらいだから」
それは……信じる他ないというか。夕方はほぼ毎日一緒にいた彗が言うんだから、間違いないよね。
「凪はこっちに来てから新しいセフレなんて作ってなかったってことで、まあそこは喜んどくべきだろ。ただ今はそれが厄介だって話だけどな」
祠稀の言葉を頭で繰り返して、確かにそうだなと思った。
凪が一夜限りの関係を使おうとするなら、その足跡を探し出すのは困難だ。
早坂先生の他に、誰か特定の人がいればよかったのに……とはあまり言えないんだけど。