僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「なんか雰囲気変わった?」
近くにあったファミレスに入ると、末尾にいるあたしに優太が振り返った。
「久々に会ってそれ? もっと他にあるでしょ」
「……久しぶり」
「久しぶり。優太こそ背、伸びたね」
にこりと作った笑みに、微かに反応する優太は不自然に視線を逸らす。
中1の時に付き合った、あたしの初めての彼氏。期間は2ヵ月か3ヵ月か、忘れたけど。
襟にかかる程度の短髪は淡く茶色に染められていて、久美たちと同じ制服はそこそこ着崩されている。
顔は至ってふつうだと記憶していたけど、鼻が高い。肌も綺麗だし、二重の線は綺麗に弧を描いていた。
いい男になったって、多分こういう時に言うんだろうな。
「話すの、3年ぶりくらい? 優太とは中1の時しか同じクラスじゃなかったもんね」
「あー……まともに話したのはな。卒業間近に大勢で集まった時、ちょっと話したのは覚えてるけど」
「あったね、そういえば」
記憶がとても朧気だけど、笑っておいた。
卒業間近と言えば、あたしは同居人を探すのに必死だったから、同級生たちとの思い出作りなんて、当時のあたしには既に要らないものだったんだ。
「ちょっと〜、ふたりでコソコソ何話してんのぉ?」
席に案内されるなりニヤける久美の隣に座って、向かい側に優太が座る。
「お前はホントいっつも騒がしいな。いろいろ余計なんだよ」
「ひどーい! 優太のくせに生意気っ」
「くせにってなんだよ!」
久美と優太が言い争う中、店員が6人分の水をテーブルに置いてメニューの説明をする。
それを最後まで聞いたあたしは軽く頭を下げ、店内を見渡した。
……ファミレスとか、いつぶりだろ。
「ちょ、凪が興味深そうに店眺めてるけど、何! どうした!」
「いや、久々に来たなーと思って」
「あー、凪って今ひとり暮らし……じゃないんだっけ?」
久美が「ルームシェアだよ!」と言ってくれたおかげで手間が省けた。