僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
その質問に口の端が上がった。理由なんてありすぎて、ひとつに絞れない。
「……びっくりした。よく覚えてるね」
「そりゃ覚えてるだろ……あんなに別格だ特別だって、散々聞かされてたら」
「あはっ! それもそうかー……うん、彗と一緒に住んでるんだ」
満面の笑顔で言うと、優太の表情が不機嫌になってくのが分かる。
もっとも、男女半々で同居してると言った時から目に見えて分かっていたことだけど。
「……何笑ってんの」
「いや? 優太、変わってないなーと思って」
「どーいう意味だよっ」
「嬉しいってことだよ」
目を丸くした優太に微笑むと、すぐに視線を逸らされる。だからあたしも言うだけ言って、先に席へ戻った。
「久美、オレンジジュースでよかった?」
「うん! ありがとーって、凪もココア好きなの変わってないね~」
「あー……これだけは一生変わらないかな」
「ん?」
聞き返してくる久美に「なんでもない」と返し、話題を持ち出す。
「てか、みんなのほうこそどうなのよ。彼氏とか彼女とか、いないの?」
「あーっそうそう! コイツさぁ!」
「うぉい! その話はやめろって!」
離れていた時間に起きた、友達の恋愛話は面白かった。
好きな人がいる。付き合ってる人がいる。フッたフラれた、告った告られた。
なんてことない平凡な、中学生からの延長線でもあり、高校生でもありがちな話。
「そろそろ手ぇ出してもいいんじゃね?」
「てか、アタシだったら、なぁ~んにもされないとムカつくんだけど」
「マジかよ! だってよー、えー……凪もそう思う?」
少し頬を染め、困ったようにあたしに問いかけてくる友達は、彼女のことが好きなんだろうと分かる。
想いを確かめ合って、手を繋いで、キスをして、体を重ねて。そのどれもがあたしにとっては初々しくて、だけど全く分からないものだった。