僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「そういえばさ、凪の高校ってもう冬休みなの?」
夕飯には少し早い食事を終え、今さらな質問に小首を傾げた。
「いや? 授業はまだ1週間あるよ」
「堂々とサボりって、相変わらずだな~」
褒められる行為ではないことを、中学の同級生は笑って済ます。
「言っとくけど、あたし高校ではほぼサボってないから。これ4回目くらい」
全く威張ることじゃないけど、それでもみんなの目は見開かれた。
「嘘だぁああ!」
「あの凪が!?」
それぞれの驚きっぷりに、逆にあたしが驚いてもいいくらい。
素行不良と言われても仕方がない時期があったのは記憶してるけど……そんなにサボってたっけ。
自分の記憶とみんなの反応の食い違いに首の後ろを掻いていると、優太まで口を出してくる。
「マジ話なら、4回って奇跡だよな」
「だよね! え~、なんで? 高校楽しいの?」
……楽しいの?
何気ない久美の質問を頭の中で繰り返した。
中学時代のあたしは学校をサボッて、何をしてたんだっけ。
「いや、……楽しいっていうか」
行くのが当たり前だったんだよ。それに、だって……。
脳裏に浮かんだ3人のシルエットが、誰かの騒がしい着信音によって掻き消される。
「げえ! また親だよ~! しっつこいなぁ、もう……」
「ははっ! 今日もかよ。出とけ出とけ!」
ぼうっと久美を見ると、ごめんとジェスチャーされたのが分かって、笑い返した。
久美は席を立って店の外へ出る途中で、電話に出たみたい。微かに聞こえた「もしもし?」という声は少し、苛立っていた。
「久美んとこの制服、セーラー服で可愛いね」
「凪の高校はブレザーなの?」
「うん。女子も男子もブレザー」
みんなが制服に身を包む中、ひとりだけ私服のあたしは自分の身なりを見てから笑う。
「いいなー。人生で1回はセーラー服着たいんだよね。もうあたし、こっちに戻ってこよっかな」
「あはは! いいじゃん、戻ってきなよー!」
「凪がいれば楽しいしなー」
みんな目を見張ったのは一瞬で、すぐに楽しげな笑顔で話し出す。
言葉って、なんて軽いんだろう。