僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「この後どうするー」
久美が電話を終えて戻ってきたのを見計らい、あたしたち6人はファミレスを出た。
適当にぶらぶらしようということになり、それぞれが歩き出す。
「今何時?」
隣を歩く久美に尋ねると、「7時過ぎ」という返事が返ってきた。
「ねえ、凪。昨日はどこに泊ってたの?」
「昨日? 駅近くのカプセルホテル」
答えながら、そういえば今日は久美の家に泊めてもらおうと考えていたことを思い出す。
だけど頼む前に、久美が発した言葉でピリッと体に電気が流れたような気がした。
「……実家?」
確かにそう言った久美は「うん」と首を縦に振る。
「凪が実家じゃなくてホテルって。家に帰ってないの?」
「……なんで?」
あたしの答えはおかしいと分かっていても、そんな言葉しか出てこなかった。
「なんでって! お父さんが家事できないからって、放課後すぐ帰ってた凪がさぁ、家に帰らないなんて信じらんない!」
ドクン、ドクン、と波打っていた脈が徐々に落ち着いてくる。
……大丈夫なのに。どうしてこんなに焦らなきゃいけないんだろう。
「大袈裟だなあ。昨日こっちに着いたの夜中だったし、疲れてたからホテルに泊まっただけだよ」
ふっと鼻で笑ったあたしは、前方を歩くみんなの背中を見つめて言った。
「それに、パパとはいつでも会えるし」
――よかった。あたし、ふつうに笑えるじゃん。
「パパが、もう冬休みだろうって感じる頃にはちゃんと帰るよ」
「サボッてるのバレたら、うるさいしね」と付け足したあたしは、久美に笑顔を向ける。
本当は次に、久美が納得の言葉を出して、あたしがまた笑って、バカ騒ぎに戻るはずだった。
いつも通りなら、そのはずだった。
だけど。
「……凪」
ちゃんと笑えてるはずなのに。
なんで久美の表情は悲しそうなんだろう。