僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


降り積もる以外の重力をかけられなかった雪は僅かに凍って、踏み締めるたびにザクザクと音を立てる。


4階にあるガーデンホスピタルは屋上庭園とも言われ、入院患者やそのお見舞いに来る人たちの憩いの場だと、係員の人が説明してくれた。


一応開放はしているけれど、冬に利用する人はあまりいない、とも。


……いた。


デイルームのドアを開けてすぐに見つけた人ひとり分の足跡。あたしはそれを、追いかけただけ。


至る所に植えられた木花のほとんどは、葉も花も付けてはいなくて、庭園というには少し寂しい。


花壇と花壇の間に備えられた剥き出しのベンチや、パーゴラの下にあるベンチもあった。あたしはそのどれでもなく、ひとつだけある東屋へと足を運ぶ。


「……体冷えちゃうよ」


屋根がある正方形の東屋は4本の柱に支えられ、コの字型にベンチが付属されていた。


その隅っこで膝を抱えていた凪は、反応も見せず顔も上げない。


速まる鼓動は緊張そのもので、それでもあたしは持ってきていた凪のコートを拡げた。


近付いてそっと凪の肩にコートをかけると、寒かったと言わんばかりに、かじかんで赤くなった凪の手がコートを引き寄せる。


……近寄らないでって、言わない……。


抱きかかえた膝に顔を埋める凪は、何を考えてるんだろう。わからないけれど、恐る恐る凪の左隣に腰かけてみた。


「……凪」


冬の夜気に晒された体は段々と冷えていき、寒さに身震いしてしまいそうになる。


「さっき、緑夏さんに遮られた時……颯輔さんに想いを伝えようとしたの?」


簡単には答えてはくれないと思っていたのに、凪はゆるく左右に首を振る。


「……言わない。言うわけないじゃん」


俯き、膝に顔を埋める凪の声はくぐもっていて、それでも答えてくれたことに変わりはなかった。
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