僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
……じゃあやっぱり、子供を産んでほしいから、緑夏さんをけしかけたってことかな。
そうすると、凪の想いに気付いてたのは緑夏さんも同じだってことに……。
「あのタイミングで」
「え?」
「……あのタイミングで、子供が産めないって言うのは、ダメだったかな」
「……」
凪の変化に、驚いたのもある。それ以上に、今までそのことを考えていたのかと思うと、言葉に詰まった。
「……間違ってたかな。逆に……産まないでよって、聞こえたかな」
……そんなことない。そう、捉えてしまう場合もあるかもしれないけど……でも。
「あのタイミングを逃したら、凪はもう、ずっと言えないと思ったから、言ったんじゃないの……?」
「……わかんない。あの時、言わなきゃって思ったのは本当だけど……ふたりを納得させるために、説得するために言ったかっていうと……わかんない」
……子供を産んでほしいから言ったのか。ずっと隠していたことを言いたくなったのか。
どちらかなんて、あたしにだって分からない。どちらかだとしても、あたしは苦しくなってしまう。
心を痛めてる場合じゃないのに。
「……凪は本当に、産んでほしいの? ……無理してないの?」
あたしがここに、凪をひとりで探しに来たのは、彼女とふたりで話がしたかったから。
ずっと俯いていた凪が、顔を上げた。ゆっくりとしたその動作はあたしの顔を見るまで続いて、凪は力ない笑みを浮かべる。
「さっき、聞いてなかったの?」
「……聞いてたけど……」
自分が産めないかもしれないから緑夏さんには産んでほしいなんて……本心なの? それとも、本心にしなくちゃいけないの?
「凪は本当にそれでいいの? 苦しく、ないの……?」
「……」
目を逸らして前を見る凪の横顔から、あたしも視線を地面に落とした。
――ごめん。ごめんね……。
苦しくないわけない。だけどそれはあたしの想像で、今この時、凪から直接聞いたわけじゃない。