僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……100%産めないわけじゃない。……卵巣にちょっと……問題があって」
「……治療は?」
凪が付け足した言葉は、胃の底から捻じれるような重みがあって。まっ先に口を出た言葉に、凪は緩く首を振る。
「……してない。治療すれば、排卵を起こせるけど……将来妊娠できる確率も低くて……結婚してないと、本格的な不妊治療だってできない……それでも、頑張りましょうって言う医者に……」
嫌気が差したんだと、聞こえた気がした。でも、でも、だったら、あたしがそうだったように……。
「セカンドオピニオンをとるのは……?」
今度は強く首を振る凪に、どうしようもない感情が湧きあがる。
「……諦めちゃうの?」
「……だって、もう考えたくない……諦めるにはまだ早いって、大人は言うけど……じゃあどうすればいいの? あたしはサヤ以外の人を、愛せるの?」
……知らない。
そんな未来のことを知る術なんて、ないよ。
「じゃあ颯輔さんのために頑張りなよ……離婚する可能性を考えるなら」
「っそんなこと!」
望んでない。望んでる。どちらも当てはまる凪は、瞳に堆く涙を浮かべた。
……ぐちゃぐちゃ。
凪はいろんなしがらみから抜け出せず、身動きを取ろうとしても何かが邪魔をするんだ。
だから、マイナスにしか考えられないの? だから、永遠より刹那を大事にしたの?
「……諦めないで、凪。頑張りたいって、諦めたくないって思う気持ちが、少しでもあるなら……未来より、今思ってることを話して……」
凪をがんじがらめにするのは、まるで有刺鉄線みたい。
それをひとりで取ろうとすれば、動くたび痛いかもしれないけど。
中からじゃなくて、外。凪を見てる人に取ってもらえばきっと、痛くないよ。
「家族が欲しい」
あたしの目をまっ直ぐ見て、紡がれた言葉。凪の瞳からポロッと落ちた涙を、言いようなく綺麗だと思った。