僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「自分の家族を……作りたかった」
「……うん」
「何より大事にするのに……何に代えても、守るのに……っ」
あたしと向き合いながら俯いて、自分の下腹部あたりをギュッと握り締める凪。その姿を見て、あたしは頬に涙を流した。
……祠稀から聞いてた。凪と彗は……本当の両親がいないという事実に、どうしようもない感情が芽生えるんだって。その気持ちは、ふたりにしか分かち合えないって。
『あたしは彗のことだって憎い』
……どうしてだろうと思った。驚いて、戸惑って、ありえないと思った。
……凪。いつか、彗が誰かと結婚して、自分の家族を持ってしまうことが、寂しかったの?
だから、縛り付けて、手放さなかったのかな。
一生、一緒にいると。その約束が、凪を支えていたのかな。
……ねぇ、でも。それは間違いだったって思ったから、彗を置いて家を出たんでしょう?
彗が大事だから、連れていかなかったんでしょう?
誰にも頼らず、ひとりでなんとかしようとしたんだよね。
「……凪…」
もう、こんなにボロボロなのに。
「治してあげられなくて、ごめんね……」
バネが弾かれたように顔を上げて目を見開く凪に、あたしができることは本当に僅かで。
「……何言って……やめてよ……有須が、謝ることじゃ……っ」
嘘と虚勢で固められた彼女を、抱き締めることしかできなかった。
「ごめん……治してあげられなくて……こんなことしか言えなくて、ごめんね……」
ギュッと冷えた体を抱き締めてるのは自分なのに、まるであたしが温もりを求めてるみたい。
凪を、失いたくなくて。
またあのマンションで、過ごしたくて。
4人で、笑い合いたくて。
「凪……さっき言ったことが本当なら、頑張ろう……? 保障なんてないけど、約束された未来なんてないけど。悪いことばかりじゃなくて……いいことを考えようよ」
あたしがいるよ。
祠稀が、彗が、待ってるよ。
それじゃあ、足りないかな。