僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「凪、あたしね……ずっと、変わるのが怖かったの。食べて、吐き続けて、痩せたけど。……中学を卒業するまで、おしゃれとかメイクとか、そんなの自分には似合わないって。……でも、変わりたいって思ったから、楽しんでみたの」
凪の体をしっかりと抱き締めながら、あたしは思い返すように目を閉じる。
「……楽しんでみたら、気持ちが楽になった。次は何をしようって考えるようになったら、選択肢が増えたの。……そしたらね、凪たちに出逢えたんだよ」
「……」
あたしに抱き締められるがままの凪が、微かに息を呑んだ。
……ほんの少しでもいいの。拙い言葉だけど……今までを、これからを、伝えるから。届いてほしい。
「ねぇ、凪……。あたし、部活で疲れてても、凪と彗が出迎えてくれて、ふたりが作ったご飯食べると、元気になるんだ」
バランスを考えた料理を作るのは、やっぱり凪が1番うまいんだよ。
「みんなで夜更かしして、リビングでゲームして……凪と祠稀は喧嘩ばっかりだけど……楽しいよ。朝、なかなか起きない彗には困るけど……いつもちゃんと4人そろって、学校行ったよね」
瞼の裏に焼き付いたみたいに、目を閉じれば思い出す。
たった8ヵ月だけど……いつも一緒にいた。
「大雅先輩と遊志先輩が混ざると一気に騒がしくなって……ふたりは今年卒業しちゃうけど、チカが入学したら、やっぱり賑やかになりそうだよね」
そっと、凪があたしの腰あたりに触れる。ためらうような手つきと同時に、凪は少しだけ頭を垂らした。
あたしは閉じていた瞼を開いて、滲んだ涙を流す。
「……凪……みんながいるよ。みんな、凪が好きだから……また一緒に話したいって、遊びたいって、変わらずに待ってる。……それだけじゃ、ダメかなぁ……。まだ、こんなんじゃ、足りないかなぁ……」
「……っ、……うっ」
嗚咽を漏らした凪は、あたしの肩に顔を埋めた。
腰に感じる凪の手は微かに震えてるみたい。その理由も包み込んでしまえるように、強く抱き締めた。
ひとりじゃないよ、凪。
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