僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「正直に生きたいって、思ってるだけだろ?」
「――……」
冷たい風が髪を靡かせて、心の奥まで揺さぶったような気がした。
自分のために吐く嘘は、弱さを隠したくて、思い通りにいかないことが怖くて、這い上がれなさそうな壁にぶつかりたくなくて。
ただ、逃げていただけ。
あたしは他人に嘘をつくけど、それは自分にも嘘をついてるということだった。
「……俺は、こういう人間だから。いちいち真剣に考えたりしねーし、適当に、ほどほどに、まぁいいかって思う時のが多い。たまには流されて生きてみるのも、悪くないと思うけど」
まるで誘導尋問だ。
祠稀の言葉はいつも自分勝手で、根拠もなさそうなのに自信たっぷりで。それなのに優しく聞こえるから、あたしはいつも、その言葉を信じてみたくなる。
「いきなり変われなんて言わねぇよ。俺たちが言いたいことは、最初からひとつだしな」
……どうしてみんなが、ここにいるのかと思った。
サヤが呼んだとすぐに分かったけど……のこのこ現れたみんなに苛立ち、どうしてほっといてくれないのかと思った。
同時に、とても愛おしく感じたのも事実だけれど。
それを素直に言えない自分にまた心を痛めて、そんな自分を思い知らされたくなくて、突き放すことでしか自分を守れなかった。
これがあたしなんだと。これでいいんだと。
――弱い。あたしは、とても弱くて、汚くて、ずるい。
それがダメなんじゃない。
それを言いわけに生きてる自分が、弱くて汚い。
……変わりたい。
こんな自分から、抜け出したい。
「……、」
そっと握られた左手に隣を見ると、熱を持って目元を赤くした有須があたしを見ていた。
なんとも言えない感情が湧きあがって、ちらりと前を見ると、祠稀と彗が飄々とした態度であたしを見てる。
……流されてみるということが、分からない。
でも、ひとつだけ分かるのは、変わらずに待っていてくれるということ。
それだけじゃ足りないかなと言った有須に、あたしは強く首を振りたかった。
そんなことないと、心の底から思った。