僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「凪がそう言うなら、俺はきっと……凪の寂しがり屋なところを利用してたよ」
やっぱり彗の体温は少し高くて、大きな手に包まれるあたしの頬は、じんわりと温かくなる。
「……謝らないで、凪。謝られると、今までの時間がなかったことにされるみたいで……悲しい」
頬から頭の後ろに回された彗の手が、あたしを引き寄せた。
コツンとお互いの額がぶつかる。
彗の手はどこかへ消えて、次に感じたのは、あたしの手を取る温もりだった。
優しく繋がれた手に、慣れた近距離に、涙が零れる。それを見られることがなかったのは、彗が瞼を閉じていたから。
「離したくないって、縛りつけておきたいって思ってたのは、俺も同じなんだよ」
だからあたしも目を閉じて、彗の言葉を聞いた。
「変わらない。きっと、ずっと。……俺は、本当に凪のことが、好きだから」
……好きだと言われて、告白に思えないのはどうしてだろう。
好きな人に気持ちを告げるような。カップルが想いを伝え合うような。それとは全く別物だと感じるのは、どうしてなんだろう。
「凪といると落ち着く……代わりなんていないって分かる。……逢えてよかった。また、逢えて……嬉しい」
閉じていた瞼から、また涙が流れ落ちた。
……ねぇ、彗。
あたしたちは本当に、遠い昔、ひとつだったのかもしれないね。前世なんてそんなの、知らないけど。いつもそう思うの。
「……彗」
温かい手を握り返して少しだけ目を開けると、同調したように彗も目を開ける。
「……家族だって言ってくれて、嬉しかった」
心の底から。そう付け足すと、彗は零れるような笑顔を見せてから、あたしを抱き締めてくれた。
多くを語らなくても、相手の気持ちが分かる。
そんな存在は、この世にどれだけいるんだろう。きっと探しても見つからないかもしれない。
だからこそ、大事にしたい。そんな自分に、なりたい。
彗を強く抱き締め返して、窓の外に広がる夜空を見上げた。
あたしが、あたしの大切な人たちの行く未来が、どうかいつの日も、輝きで満ち溢れますように。
暗い空を彩る星たちに、負けないくらい。
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