僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
黎明へのカウントダウン
◆Side:彗
あれから2日経ち、今日は凪の退院日。空は嫌味なほどに晴れ、太陽は1番高いところで地上に光を注いでいた。
「凪、顔色よくなって安心したっ」
4人で病院の正面玄関に出ると有須がそう言って、凪は「そう?」とだけ口にする。
一昨日も昨日もちゃんと寝れたみたいだし、ご飯も食べていたから、本当に顔色はいい。
「んじゃ、俺らは先に帰っから」
有須が持つ荷物を、何も言わずグイグイと引っ張りながら言う祠稀に俺は頷く。
……有須がすごい抵抗してるけど。
「お前! 荷物よこせって!」
「ひとりで持てるよ!」
「かわいくねー……」
祠稀の冷たい視線にショックを受ける有須に、俺は声を出して笑った。
「祠稀じゃ頼りないってさ」
「彗テメー! お前も大概かわいくねぇよな!」
「……俺、男だよ?」
なんで呆れたような目で見られるかは分からないけど、立ち話している時間はあまりない。
「そろそろ行かないと、新幹線乗り遅れちゃうよ」
そう告げると、有須が「あっ」と声を出し、祠稀が腕時計を確認した。
「……見送れなくてごめんね」
「っえ! いいよ凪! もう道覚えたもん、ねっ!」
同意を求められた祠稀が白い目で有須を見つめる気持ちは、なんとなく分かる。
「ま、行くわ。帰ってくる時連絡しろよー」
「あ、じゃあ! 彗も凪も、またね!」
早々と歩き出す祠稀を追いかけながら有須は笑って、俺と凪は軽く手を振った。
ふたり並んで歩く姿を見送り、隣に視線を移す。
「駅まで見送りしたかった?」
恨めしそうな目で見上げられた俺は肩を竦めてから、凪の荷物を取り上げた。
「……ちょっと、どう接すればいいか迷う。まだ何も解決してないし」
凪は俺たちを拒絶することはなくなったけど、ふたりには口数が少ないままだもんね。
颯輔さんへ抱く想いを知られてマンションを出た凪は、どう接すればいいか分からないんだろう。
何かしら決着というものがつかなければ、心から笑えないのかな。
俺と凪もまた、その決着と呼べるものがついたら、変わらざるを得ない気がした。