僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ

――…


深夜1時過ぎ。自室で煙草を吸いながら、意味もなく遠赤外線暖房器を眺めていた。


さっき風呂をあがったばかりで、濡れた髪が肌に張り付いて煩わしい。


……ドライヤー……めんどくせえな。


煙草を灰皿に押し付け渋々立ち上がると、カチャン、と静かにドアが閉まる音。


少し考えてから、部屋のドアを開ける。リビングは薄暗く、誰の姿もなかったけど、電気が点いた廊下から足音が聞こえた。


「コンビニ?」

「うわっ!」


リビングに電気をつけて現れたのは、やっぱり凪。部屋から顔だけ出していた俺を確認すると、「なんだ、祠稀か…」と胸を撫で下ろす。


「牛乳、買いに行ってきたの」


ガサッと牛乳が3本入った袋を持ち上げて見せた凪は、そのままキッチンへ向かいながら口を開く。


「彗と有須は? もう寝た?」


……夕飯食べ終わって、割とすぐ全員自室に戻ったからな。


「彗は疲れたって、とっくに寝た。有須は早寝早起きだろ」


久しぶりに4人そろって食べた夕飯は、騒がしくもあったし、穏やかでもあった。


ただ少し前と違ったのは、主に流れていたテレビ番組の話ばかりだったこと。


「てか、こんな時間にひとりで外出歩くんじゃねぇよ」


部屋から出て、歩きながら言う俺に凪は冷蔵庫を開けながら失笑する。


「コンビニまで片道5分じゃん。危ないことなんかないよ」

「あってからじゃ困るから言ってんだろ。女なんだから、少しは気にしろ」


言うだけ言って、洗面所へ向かった。バカデカい鏡の前に立ってドライヤーを手に取ると、最大風速にして髪にあてる。


……やっぱ、凪と目が合わねぇ。


いや、完全に合わないわけじゃねえんだけど。会話も短いっつーか、変によそよそしいってか。必要以上のことは話さないって感じがする。


気のせい、気のせい。って思っても気になるのが俺なわけで。


髪伸びたな、とか。そんなどうでもいいことを考えて、髪が乾くのを待った。




洗面所から廊下に出ると、微かに甘い匂いが漂う。口の中にあるピアスのキャッチを噛みながら、リビングに足を踏み入れた。


「……今作ってんの?」


鍋で温めていた牛乳を火から下ろす凪の背中に声をかける。
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