僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


諦めたのか、凪は俺から目を逸らしてマグカップを手に取る。


「……お前、なんか俺にだけ余所よそしくねぇ?」


一口飲んだのを確認してから聞くと、ギギギ…と音でも鳴るんじゃねぇかってくらい小刻みに、凪は顔を見せた。


「気のせいじゃない?」

「嘘くさっ」


笑顔の不自然さが今日いちばんだったぞ、おい。


俺は思いのほか大きい溜め息を吐いて、ココアを喉へ流し込む。


「別に、何か無理やり聞こうとは思ってねぇよ」


多分、凪はそれを警戒してるんだろうと思った。身構えてるっていうか、いつ聞かれるだろうって。


「……そういうんじゃなくて……聞かれることが困るんじゃないし……」


じゃあ今聞いていいわけ?と思ったのも本当だけど、他に理由があるならそっちを聞きたい。


もごもごと喋る凪なんて、めずらしすぎる。


「じゃあ、なんだよ」

「きらいっていうか」

「はあ!?」

「間違った。苦手な部分を見つけたっていうか……」


いやいやいや。どっちもたいして変わんねぇだろ!


「ふざけんなよお前……今さら、何が見つけただよ」

「いや、だから、全部が苦手なわけじゃないって。うまく言えないけど……」


気まずそうに苦笑する凪に疲れが押し寄せる。


全部って言われても困るけど、俺のどこが苦手だっつーんだよ。久しぶりだから、どう接すればいいか分かんなくなったとか、そういうことか?


……考えんのもめんどくせえ。


「ハァ……まあいいわ。何が苦手になったのかは知んねーけど。そのうち慣れるだろ。ていうか慣れろ」

「……それ」

「は?」

「その、適当っぽく見えて、強引なとこが苦手。……なんでそういう考えになんの?」


こういう性格だからとしか言いようがないんですけど。


「つーか……ほんと今さらじゃねぇ? 俺、元からこんなんじゃんよ」


図星なのか、凪は顔をしかめ、悔しそうに俺を視界から外す。


ムスッとした横顔になんでだと突っ込みたいところだけど、若干感じる違和感に首を捻った。


……苦手なとこ見つけたってことは最近だろ? おかしくね?
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