僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……寒い」
「自分で連れ出しといて何言ってんのよ。ほら」
ブルブルと震える彗に、途中のコンビニで買った温かいお茶を差し出す。
あたしは何ひとつ持ち物がなかったけど、彗は千円札を3枚ほど、そのままポケットに突っ込んでいた。
時間が分からないなと、さしてどうでもいいことを思ったけど、その心配はないらしい。
マンションから歩いて25分程度の、そこそこ大きい公園。ぽつぽつと敷地を囲むように配置された外灯の他に、時計台があった。
あたしと彗は遊具を前にベンチに座り、お互い缶のプルタブを持ち上げる。熱すぎるくらいのココアを喉に流し込むと、体の中にジンワリと熱が広がっていった。
せっかくお風呂に入って温まったのに、こうもすぐ外に出てしまったら体も冷える。
……別に、嫌じゃないけど。
冷やされた息を吐きながら意味もなく空を見上げていると、彗がベンチから降りて地面にしゃがみ込んだ。
雪が積もった地面は、灰色が混じった水色に見える。
特に声もかけずに傍観していると、彗は地面の雪を掴んだ。それをギュッ、ギュッと、丸めたかと思えば、再び地面に置いて転がし始める。
そんな行為を2回繰り返してできたのは、手の平サイズの雪だるま。
「……」
辺りを見回していた彗は雪だるまを手に立ち上がり、どこかへ歩いていく。黙って見ていると、葉のない木の下にしゃがんで、手を動かしている。
……何やってるんだろ。
そう思いながらも自由な彗から視線を逸らし、雪の積もった遊具を眺め続けた。
深夜だというのに、雪明りで周囲は仄明るい。
星が綺麗に見えるのは冬なんだっけ……? 冬は1等星が多いからとか、夏より空気が澄んでるからとか、聞いたことあるな。
冷えた空気に白い息。地面を覆う雪に夜空を彩る星。
どことなく時間がゆっくり流れている中で、綺麗だなと思うものを見つけた。
……静か。
そう思った時、雪を踏み締める足音と共に彗があたしの前に現れる。細い枝や、小さな石で顔を作ってもらった雪だるまと一緒に。