僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「誕生日プレゼント」
差し出された、雪だるま。
驚きに近い表情で固まっていると、彗は雪だるまを地面に置いて、また1体作り始める。
あたしはベンチに腰かけたまま、彗の背中を凝視した。
……今なんて言った? 差し出したんじゃなくて、見せただけ?
「……雪だるま、作りにきたの?」
「ううん。誕生日プレゼントあげてなかったなぁって思って、なんとなく」
「……もっとかわいいの作ってよ」
「え……これ、凪だよ?」
あたしに背を向けたまま言った彗は、最初に作った雪だるまを指差した。
両目は丸とは言い難い小石がはめ込まれて、口は葉っぱを千切ったのか、笑ってるように見える。
言っちゃなんだけど、かわいくない。
鼻がないのはどういうことなの。両手を表す小枝は細いけど、先じゃなくて途中から枝分かれしてるし。手から何か生えてるってことにならない?
あたしだと言う雪だるまをジッと見ていると、彗は黙々と新しいのを作っていく。
「……素手じゃん。しもやけになるよ」
「大丈夫」
冷たくないの?
そう聞く前にベンチから降り、彗の隣で雪を掴む。見ると、彗は既に3体も作っていて、あたしの視線に気づくと微笑んだ。
「凪も作りたくなった?」
「……暇なんだもん」
「じゃあ凪の顔と手も持ってくる」
あたしの雪だるまの分、ね。
再び小石やら小枝やらを取りに行った彗に構わず、丸めた雪を大きくするために雪の上で転がす。
冷たい……。こんなことするの、何年ぶりだろう。
1体、2体と作り続けていると、戻ってきた彗があたしの雪だるまを見るなり笑った。
「……何よ」
「いびつ。これとか、メタボすぎるよ」
失礼な。体を大きくしすぎただけじゃん……。
「凪は料理がうまいけど、こういうのは得意じゃないよね」
言いながら、雪の上に様々な小石や小枝を置いて、彗は自分の雪だるまに付けていく。
ゆっくり、ゆっくり流れる時間。まるで彗とふたりきり、世界に取り残されたみたい。