僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「でーきた」
ハッとすると、彗は「見て」と目の前に並んだ7体の雪だるまを指差した。
ぼんやりしてた……いつのまにあたしの分まで作ったんだろ。
全ての雪だるまに顔と手がついていて、やっぱりかわいいとは言い難いけど、各々の表情が違うことは分かった。
「これ全部、プレゼント?」
「うん」
こんなにもらってもなぁ……。
なんて考えてると、あたしだと言われた雪だるまが真ん中にいて、他の雪だるまに囲まれてるように配置されていることに気付いた。
「これが凪で、これ俺。有須に、祠稀に、メタボが遊志先輩。あれが大雅先輩で、1番ちっちゃいのがチカだよ」
メタボが遊志だなんて失礼だよとか。ちっちゃいなんて言ったらチカが怒るよとか。
おかしかったけど、楽しげに話す彗に、笑い声は届けてあげられなかった。
祠稀の目は三角っぽい小石でつり上げられてて、不機嫌みたい。チカは丸い目をして、両手を目いっぱい上げて、ご機嫌らしい。
有須は楽しそうな笑顔だと分かるし、大雅と遊志も笑顔だけど、土で顔が描かれていて、なんか汚れてる。
「……彗の顔、眠そう」
「小石が見つからなくて」
真っ直ぐな小枝を短く折ったらしく、横一線の眼は眠い時の彗によく似てる気がした。
あたしと彗はしゃがみ込んだまま、黙って雪だるまを見つめる。
風が吹けば身を縮めて、時折乱れた髪を直したり。きっと黙っているのはあたしだけで、言葉が出なかったと言ったほうが正しいんだろう。
彗はあたしの周りにみんなを集めて、静かに話し出す。
「俺が来て、祠稀が来て、有須が来て。みんな同じ高校だーって、騒いだよね」
「……」
「梅雨に大雅先輩と出逢って、遊志先輩が出てきて、秋にチカと逢った。凪の周りにはいつも、誰かいるよね」
まるで小さい女の子がするような人形遊びみたいに、彗は雪だるまを手で動かす。
歩いたり、飛び跳ねたり、転がったり。ちょこまかと動くそれは、いつもあたしのそば。