僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「でも。泣いたり怒ったり笑ったり、ずっと騒いでるうちに時間が過ぎて、みんな、それぞれの道へ歩き出す」
ちょん、ちょん、と。最初はあたしを囲んでいたみんなが、彗の手によって背を向け始める。
真ん中に取り残されたあたしは、みんなの背中しか見えない。
「……寂しいね、凪。みんな、離れちゃう。そんな日が来るのは、寂しいよね」
「……」
隣にいる彗の顔も見ず、あたしは一心に、雪だるまのあたしを見続けた。段々と視界がぼやけていくのは、気のせいじゃない。
「でも凪、見て。こうやって、追いかけることもできるよ」
彗が雪だるまのあたしを持って、誰かの背中を追いかける。
「逢いに来たよ」って、あたしを喋らせる。また別の人へ、同じことを言う。
「みんな、それぞれの生活があって。なかなか逢えなくても、心配することは何もないんだよ。……知ってた?」
緩く首を左右に振ると、彗はあたしの位置を変えた。あたしを囲むように背を向けていたみんなの、輪の中に。
「真ん中で騒いでた時は、すごく近かったけど。時間が経てば離れちゃう。もっと時間が経てば、もっと離れちゃう」
彗はひとりずつ、少しずつ、前へと前進させて。最初にみんながあたしの周りで騒いでいた場所は、丸い空洞になって大きくなっていく。
……過去が、遠くなってくみたい。
でも、変わらない。
「1人でも、独りじゃないね、凪。みんな前に進んでいくけど、凪も俺も、周りにはみんながいるんだね」
どれだけ離れても、どれだけの時間が過ぎても、変わらない、崩れない輪が、そこにあった。
見ることができない絆が、見えた気がした。
「1人ひとり、また別の輪ができて。俺と凪には、颯輔さんと緑夏さんとの輪ができて……だけど、みんなの輪と同じ。変わらないよ。きっとずっと、変わらない」
ぼやけていた視界が明瞭になって、また滲む。
涙が浮かんでは落ちて、浮かんでは落ちて。それでもあたしは涙を拭うことも、顔を俯くこともなかった。