僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「うわっ!と……」
喫茶店から電車を1本乗り継いで、マンションの最寄り駅から出ると、今日買ったばかりの携帯が初期設定のうるさい着信音を鳴らす。
手に持った途端のことだったから、思わずビックリしてしまった。
……大雅?
有須に教えてもらったからみんなの連絡先は登録してるけど、まだ有須以外にはあたしの新しいメアドも番号も教えてないのに。
画面上にスクロールされた名前は確かに大雅で、有須が教えたのかなと思いながらメールを開く。
≪遊志がウザいから、どうにかしてよ。祠稀が祠稀がって、うるさい。≫
「……は?」
意味が分からない。
そういえば、携帯買ったらメアド教えてねって言ってたけど……まっ先に送ってきたと思ったら、何これ。
どう返信しようかと考えていると、再びメール受信の画面になる。今度は遊志だ。
≪凪~。あんな? 祠稀が俺の扱いめっちゃヒドイねん。連絡する言うても全くこーへんし、絶対俺のこと邪魔者扱いしとるで。凪が俺に惚れへんようにって! アホやな~。そんなん、当たり前やんなぁ? 俺と凪はー、運命の赤い糸でむすばらまたなやまたなか≫
……何これ。最後とか、特に、何これ。
大雅に邪魔でもされて、奪い合ってもみくちゃになったまま送信されてきた感がするんだけど……。
「……どう返信しろってのよ」
携帯片手に、マンションへの道を歩く。横断歩道の赤信号で止まると、待ってましたと言わんばかりにメールが届いた。
≪いくら凪でも、祠稀を傷付けたら許さないよ。≫
さっきから祠稀、祠稀って……チカまで、何を言ってるんだ。
みんなで集まって、あたしにメールを送ろうって話にでもなったのかな。
そもそも大雅がメアド教えてねって、怪しい笑顔を向けてきたのは、これ?
全く意味がわからない。意味なんて、ないのかもしれないけど。
青信号になって横断歩道を渡り出すと、案の定次のメールが受信される。今まで3人のメールに出てきた、祠稀からだ。