僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


≪ココア飲みたすぎてキツイんだけど≫


もうコレ……返信しなくていいかな。


ちょっと、なんか、色々言われるのかと身構えたのに……ココアって。


横断歩道を渡り切れば、マンションはもう目と鼻の先だ。


しきりに鳴る携帯は、ほぼ同時に2通のメールが来たことを知らせる。


1通目は有須で、2通目は彗。これで終わりだろうなと思って有須のメールを開くと、少しドキリとした。


≪凪と、もっと話がしたい。≫

「……」


なん、なんだろう……ほんとに、このメールは。


今から帰ってくるあたしに送るメールにしては、変だ。直接言えばいいのに、これじゃあなんだか帰るのが気まずい。


マンションのエントランスまで来て、鍵を取り出す。集合インターホンに鍵をかざしてオートロックを解除すると、グランドロビーに繋がる自動ドアが開いた。


エレベーターへ向かう歩幅が、ちょっと小さくなる。


持っていた携帯を操作して受信箱に戻り、未読マークが付いた彗のメールを見つめた。


大雅に遊志、チカに祠稀、有須と続いて、彗はなんて打ったんだろう。


ボタンを押すと、見覚えのある淡泊な文字が目に入る。



≪誕生日、おめでとう。≫

「――…」


あたしがマンションを出てってから、みんなが1通ずつ送ってきたメールだ……。


彗が大量にメールを送ってきた中で、紛れていたみんなからのメール。


読まなかった。捨てられた携帯に閉じ込められたままのメール。

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