僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「なんで、今さら……」


帰ってきてとか、戻ってこいなんて、一文字もない。


それでも、とても、とても、遠回しに。何も変わっていないと、待っていると、伝えられていた。


あたしが読んだのは彗のメールだけだから、本当に前と一緒かなんてわからないけど。彗のメールは前の時と少し違う。


前はなかった、添付された写真。


彗が作ってくれた、7人の雪だるま。


……最高の、誕生日プレゼントかもしれない。



携帯をしまい、エレベーターのボタンを押す。すぐにドアが開いて、あたしは軽く目尻を拭ってから無人のエレベーターに乗り込んだ。


閉と7階のボタンを押してから大きく1歩後ろに下がると、ドアは閉まり籠は上昇し始める。


出入り口の上枠に取り付けられた乗場インジゲーターをぼんやり見上げていると、1から2に変わった。


7階に着いた頃には、ドキドキと高鳴る鼓動は落ち着いていてほしい。


きっと1階上がるたびに、脈は速くなってしまうと思うけど。


みんな、家にいるのかな。リビングに集まって、談笑でもしてるのかな。あたしが帰ってきたら、どんな顔をしてなんて言うんだろう。


彗は、有須は、祠稀は……。


今までのことを思い返すと、容易に想像できて、少し笑ってしまう。


ポン、と軽快な電子音が鳴り、7階に着いた。開いたドアを通り抜け、供用廊下を突き進む。



足取りは軽い。


体の内から鳴る鼓動は、高揚感。


< 755 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop