僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
……幸せは作るものだと思っていた。だから壊れるものだと思っていた。
作るのではなく感じるものだと思うようになったのは、壊れたのではなく見失っていただけだと気付いたのは、多分、最近のこと。
自分が選び、築いた毎日の中に潜む幸せを、ひとつも見逃さないようにするのは困難だ。
当たり前に慣れた毎日は変化に乏しく、時に憂鬱にさえさせる。
けれどそれを知ってるから、ふとした瞬間に思い出せればいいと思ったんだ。
701号室の前に立ち、取っ手に手をかける。簡単に開いたドアの先には、左右キチンとそろえられたり、無造作に脱ぎ捨てられたローファーやスニーカーがあった。
あたしはパンプスを脱いで、リビングへ一直線。
話声が聞こえる。
人影が見える。
ドアを開けると、あたしの姿を確認した瞳が柔く細められた。
「おかえりっ」
とりあえずあたしは晴れていたら幸せだし、ご飯が好物だったら幸せだし、ふかふかの布団で寝られたら幸せ。
友達や家族と過ごす時間があって、笑っていられたらもっと幸せ。
今でも自分に自信はない。
上手な生き方だって分からない。
でも今の自分は、嫌いじゃない。
「ただいま!」
自分のゴールさえ見えないけど。
だけどきっと、歩いていける距離。
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