僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「あたしだってさ、もう早くくっついちまえ!って思うけど……なんだかなぁ……」
ローファーを履いて昇降口を出ると、先に出ていた祠稀は歩き出す。
以前ほど靡かない祠稀の髪だけど、光が当たると蒼く見える色は変わらず綺麗。
「あいつらの時間は、絶対俺らより遅く流れてると思うね」
睫毛も長いし、鼻も高くて肌もきめ細かいままなのに。髪を切っただけで違う人みたいだなと、祠稀の横顔を見て思う。
「まー……のんびりし過ぎじゃない?って突っ込みたくもなるけど、そこが1番どうしようもないよね」
ふたりともマイペースというか。焦りとか感じないんだろうな。彗に至っては、本当に何も考えてなさそう。
「有須にけしかけても、まだ無理だの、このままでいいだの……。そうやってるうちにバーサンになっても知らねぇかんな!」
急に後ろを向いて有須に牙をむく祠稀。当の本人は驚いて、顔を赤くして、ムッとしてる。
3メートルほど開いた距離じゃ、恥ずかしがり屋な有須は反撃の言葉も叫べないみたい。
「はーあ。彗も彗でぽやっとしてるしよ。アレか。草食系ってやつか」
ちゃんと前を見て歩く祠稀はポケットに手を突っ込み、呆れたような声を出した。
彗に有須が好きかと聞いても、好きと返ってくるだけで、そんな会話自体ムダな気がするからなぁ……。
「まあ、彗はああ見えて、やる時はやる子だよ」
「あと1年もねぇのに。ちゃっちゃとやれよ、マジで」
そう祠稀が言って、あたしは微笑むだけだった。
あと1年もない、同居生活。
あれから今まで、毎日が楽しく幸せなだけではなかった。
あたしは治療を始めて、副作用で苦しむ時もあるし、有須も落ち着いたけれど、問診だけ受けに定期的な病院通い。
彗はウチの養子になるために、あたしやパパを含めて色々な調査を受けたけれど、まだ親族里親制度の形を取ったままだ。
祠稀も祠稀で、お母さんとお父さんは離婚して、チカのこともまだ落ち着かない。それに、お父さんや天野の裁判が来年から始まるだろうと言っていた。
まだまだ、時間のかかることばかり。