僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
疲れたと思う日も、何も考えたくないと思う日もあった。
悲しさや苦しさは当たり前のように存在していて、それを少しも感じない時なんてないんだろうと思う。
全てを受け止めるには深く知らなければいけなくて。それによって生じる感情もコントロールできるようにならなくちゃいけない。
自分と、相手と。誰かと、何かと。
向き合っても見返りなんてものはなくて、強くなればなるほど、弱さを知らなければいけなかった。
人には乗り越えられる壁と、歩み寄り人生を共にしなければならない壁があったから。
それでもあたしたちはそれぞれ何かを抱え、流れる時間の中を生きてる。懸命に、ゆるやかに、生きていきたい。
「はーっ! 今日の夕飯、何にしよっか」
空に向かって伸びをしたあたしを見て、祠稀は少し眉を寄せた。
「肉。最近食ってねぇ」
「じゃあ、すき焼きにでもしよっか。白菜と豆腐多めで」
「おい、肉だって言ってんだろ」
「シメはうどんにしてあげるよ。あ、夜食のほうがいい?」
「肉だっっつーのに!」
肉、肉ってうるさいな。せっかく受験勉強する祠稀の夜食まで考えてあげたのに。
「じゃあカツ丼にする? 祠稀、この前のテスト散々だったもんね」
ものすごく嫌そうな顔をされて、頭まで小突かれた。痛いなと睨むと、いつの間にか祠稀は微笑んでいて、息を呑む。
「気がはえーんだよ。まだ1年あるだろ」
……さっきは、1年もないって言ったくせに。どっちよ。
学校の敷地内を出て、マンションへ向かう帰り道。地面にはパラパラと桜の花びらが落ちて、見上げれば満開の桜。
夏になれば木々は生い茂り、秋になれば葉は落ちて、冬には雪化粧されるんだろう。
4人で過ごす季節の移り変わりは、あと1度だけ。
祠稀が大学受験をすると既に決めているように、季節が変わるたび、それぞれの道が決まっていくんだ。
来年の春、あたしはどこで、何をしてるんだろう。
分からないから、前へ。
今日という日を胸に刻みながら、未来へ架ける橋を探しに、進んで行こう。
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