僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「俺も有須のこと、好きだよ」
口に出せば込み上げる喜びが、そのまま顔に出る。すると暫く固まっていた有須が、口をパクパクさせて、やっと言葉を発した。
「そ、それは、あの……同居人とか……友達としてじゃなくて、女の子として……?」
「? うん」
「っじゃ、あ……それは、つまり……」
段々縮こまっていく有須に首を傾げていると、ふと手をバタバタ動かしてる凪が目に入る。
視線が絡むと、凪は口を大きく開けて声も発さず何か言い出した。
……口パク? ……か、の、……、か、の、……うん?
「彼女……っ!」
2回口パクされても分からなかった俺に苛立ったのか、吐息にも似た小さな声で言った凪に、やっと納得する。
その隣では祠稀が「言え!」と同じく小声で言いながら有須を指差した。
そんなふたりの言葉は、有須にも当たり前に聞こえてたわけで。再び俺と目が合うと、耳まで赤色が上がる。
「……俺の彼女に、なる?」
これでいいのかな?と凪と祠稀を見ると、なぜかガックリと肩を落としていた。
あれ? 間違っ――…。
「なるっ!!」
強くハッキリとした、威勢のいい有須の声にビックリしながら、俺は小さく頷く。
「……ハイ」
そんな返事もつけて。
「なる?って……なる?ってなんなの……」
「彗が、なってください、なんて言えると思った俺らが間違ってた……」
凪と祠稀が肩透かしを食らったような顔で、ソファーにドサッと腰を下ろす。
「ま、よかったじゃねーか。めでたく今日からお付き合いってことで」
デニムのポケットから煙草を取り出した祠稀は、にやにやと有須に声をかける。
「でも祠稀、夢かもしれない……」
「夢でたまるか! 見ろ! 彗の緩み切った顔!」
恐る恐る俺を見た彼女に微笑むと、すぐに有須は「どうしよう!」と祠稀によく分からない質問をしていた。
……俺と有須は付き合ったことになるのか。
有須が俺の、彼女?