僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「んー……欲しいかな、一応」
「取ればいいじゃん。誕生日1ヵ月前から教習所通えるし」
「じゃあ祠稀、8月には通うんだ?」
「まぁ、そのためにバイトしてたしな」
まだ畳み終わってない洗濯物を拾って、祠稀は言う。
……あったほうが、後々便利かな。
「んー……考えとく。でも祠稀、そんなことしてて大丈夫なの?」
仮にも受験生だし、息抜きって言っても免許取るのに時間かかるんじゃダメじゃない?
「受験生は夏が勝負ってか。いいんだよ俺は。そんな上の大学目指すわけでもねーし、今の成績キープしてりゃ余裕」
フンッと自信満々に笑うのは相変わらずというか、祠稀らしい。
「はー、終わった。しかし眠くなんなー、この気温」
「ね」
同調した俺に、祠稀は「片付けてくる」と自分の洗濯物を持って部屋へ向かった。
俺は凪と有須の洗濯物を1人かけのソファーに置いから、自分の分を持って立ち上がる。自室のドアを開けて閉めることもなく、クローゼットに直行。
……けっこう服増えたな。
ぎゅうぎゅうと衣類ケースに押し込みながら、こんなに増えたのは祠稀に連れられて買い物に行くようになったせいだなと思う。
クローゼットを閉めて部屋をぐるりと見渡すと、少し散らかってることに気付いた。
ちょっと片付けようと袖を捲って、テーブルの前に座る。
雑誌や教科書、ノートやペンなどを適当に纏め、床で絡まる携帯や音楽プレイヤーの充電器もほどく。
……あれ。イヤフォンってどこいったかな。
テーブルの下を覗くと、目的の物をすぐに見つけて、ついでに落ちてたペンと進路希望調査書を見つけた。
「……」
それらを拾い上げ、テーブルの上に置く。俺の視線を奪うのは、やっぱり調査書だけだ。
春が終わって梅雨が来て夏が始まる前に、また調査書は配られるんだろう。
2年生の後半から渡されるようになった調査書には、いつだって第一希望、第二希望、第三希望の欄。
最初は適当に埋めてたけど、2回目はちょっと真面目に書いた。最後の調査書を書く時には、本気で目指してるようになるのかな。