僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「俺と他の初代メンバーも何人かいるけど、今はチカがいるしな。その下に何人も、チカを慕う奴もいる。ユナなんか、もうほぼ顔出してねえもんな」
「……うん。たまに、ふらっと遊びに行くくらい」
「そうそう。そんくらいでいいんだよ、祠稀も」
言葉が出ないのは、薄々自分でも、自然とそうなるんだろうと頭の隅で思ってたからだ。
「来たくなったら、来い。威光にいなくなったからって、それがヒカリを忘れたってことにはならねぇから。お前はちゃんと覚えて、抱えて、そうやって今まで生きてきたんだから。来年、堂々とヒカリに逢いに行きな。教師になるんだって、自慢気に言ってやれ。……絶対、喜ぶから」
「……」
俺の脚に絡まっていたユナの腕が離れたと思ったら、ジャケットの裾を軽く引っ張られる。
落としていた視線をユナに向けると、差し出された手の平の上に何かがあった。
「……あげる」
そう言われたのは聞こえたけど、辺りは薄暗くて何を差し出されたのかよく分からない。しゃがみ込んで、ユナの手にある物に触れると同時に気付いた。
「これ……」
「ユナのお守り……祠稀にあげる。合格しますようにって」
ぎゅっと俺の手を握って、お守りだと言う物を渡してくるユナ。
少し冷えたユナの手が離れると、俺はゆっくりと自分の拳を開く。デザインカットされた、見覚えのある鎖。
ヒカリの、ピアスチェーンだ。
「ユナはもう、大丈夫だから。次は祠稀の番。……受験、頑張ってね」
ぐしゃりと、また大きな手が髪を乱して、強く唇を結ぶ。
……だから、嫌なんだ。
秋はヒカリのことで、嫌でも感傷的になる。あの頃に思いを馳せてしまう。
「こんなん、お守りじゃねぇよ……」
形見だ。今まで何ひとつ形として持っていなかった、確かにヒカリがいたという、証。
「……合格したら、お祝いに写真も渡しに行ってやろうか?」
うるせぇな。なんだよ、写真って。そんなもん、渡しに来なくていい。
ピアスチェーンを握り締めて立ち上がった俺を、リュウが目元に微笑みを帯びて見つめてくる。