僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「絶対自分で取りに行くから、用意して待ってろ」
本当は今すぐ欲しいけど。これでまた、頑張る理由がひとつ増えた。
リュウもユナも微笑んで、ただ一言「待ってる」と言ってくれる。
「じゃーな」
言いながらふたりに背中を向け、軽く手を上げた。
俺はこれから先も、憧れて止まなかったヒカリを追い越してしまう勢いで、限られた時間の中を精いっぱい、進んで行こう。
「ただいまー」
「お帰り。ちょうどご飯できたよ」
マンションに帰ると、凪がキッチンから夕飯を持って出て来る。
ここ1年、朝昼の飯は相変わらず交代制だけど、夕飯はほぼ凪が作るようになった。
「たまには出前とかコンビニ飯でよくね? 大変だろ」
「冗談やめてよ。あたしが唯一勉強から解放される貴重な時間を奪わないでくれない?」
何度言っても、この返事。どんだけ勉強嫌いなんだよ。逆に言えば料理好きってことになるんだろうけど。
「ふたりとも部屋いるから、着替えたら呼んできて。あ、ちゃんとうがい手洗いもしてきてね」
「ハイハイ。言われなくても分かってるっつーの」
気だるく返事をした瞬間、ものすごい剣幕で睨まれて逃げるように自室へ向かった。
「コッエー……」
あれは相当ストレスが溜まってるなと思いながら、ベルトを解いて下だけスウェットに取り変えた。
煙草とジッポをポケットに押し込んでリビングへ戻る。
そのまま彗の部屋のドアをノックして、返事も待たずに開けた。
「彗、め、し……」
って寝てるのかよ。余裕か。
勉強道具が拡げられたテーブルに突っ伏すどころか、ベッドですやすやと眠っている。
ハァ、と短い溜め息を吐いて、しっかりと彗の体を包む布団を勢いよく引っぺがした。
「彗! 飯! 起きろ!」
ゆっくり瞼を開けた彗は俺に視線を向けることもなく、再び瞼を閉じる。