僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「すーいー、めーしー」


ベッドに腰かけて彗の頬をつまむと、恨めしそうな視線が向けられた。


「いひゃい……」

「じゃあさっさと起きろ」

「うー……」


彗は目を擦りながら渋々起き上がる。髪はボサボサだし、いつから寝てたんだか。


テーブルにはセンター試験の過去問がいくつかあった。ひとつ手に取って眺めれば、俺の表情は険しくなる。


「うへぇ……もう問題の意味が分かんね。よく解けるな、こんなの」

「んん……ん? 何が……?」


こんなぽやっとしてる奴が、国立の難関大学を受けるってこと自体、奇跡なんじゃねぇかと思う。


俺も一応そこそこ上の大学を目指してはいるけど、教職課程が設置されている大学で、自分の学力に見合ってればどこでもよかった。


彗は教師にも期待されてたし、学力で言えばそれは凄い奴なんだろうけど、俺にはいまいち実感がない。


「眠い……」


こんな、年中眠いが口癖の奴なのに。


「ほら。飯食って風呂入れば、眠気飛ぶだろ」


ベッドから彗が脚を出したのを確認してから有須の部屋を向かう。


軽く見遣ったダイニングテーブルには、4人分の夕飯が並んでいた。


ドンッと強めにドアを叩いて、「有須」と呼ぶも返事は返ってこない。もう一度強く3回ノックすると、やっと返事がきた。


「飯!」

「あ、うん! 今行く、わわっ!」


バサバサッと何かが落ちた音がして、俺は呆れながら勝手にドアを開けた。


「何やってんの?」

「あは……落としちゃった」


机の下に散らばった教材やプリントの数々。近くに転がっていたペンを拾い上げ、有須の元へ歩み寄る。


「あ、ごめん。ありがとう!」


急いで纏めた教材やらを机の上に置いて、有須はペンを受け取った。


「ご飯だよね。今日はなんだった?」

「知らね。肉だか魚の煮物っぽかったけど」

「……祠稀って、未だにレタスとキャベツの区別もつけられないんだよね……?」

「さすがに見分けられるようになったわ!」


バカにしやがってと思いながらリビングへ戻ると、既に彗が席に着いていた。
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