僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「わー! おいしそう!」
テーブルに並ぶ料理を見て喜ぶ有須は、4人の中で誰よりも早く受験する。
栄養士の専門学校を志望して、来月に推薦入試。仮に落ちたとしても、11月に一般入試だ。
学校での生活態度も成績も文句なしの優等生だから、推薦で受かりそうだけど。
「しっかり食べて、風邪引かないようにしないとねー。面接で答えること、纏まった?」
椅子に座りながら凪が聞くと、有須の笑顔は段々と青ざめていった。俺はシンクで手を洗いながら、その様子を眺める。
「うん、答える内容は大丈夫なんだけど……あがり症治す方法ってないかな……」
「「「……」」」
そこが問題なのか、お前。
「今日も学校で面接練習したんだけど……噛みまくった上にテンパッちゃって……」
うがいをしながら想像したら、危うく吹き出すとこだった。
「うーん……そればっかりは練習あるのみだよねぇ」
「そうなんだけど、どうしようー! もう、どうしよう!」
「つーか、噛んでもちゃんと答えればいいだけの話じゃん」
有須の右隣に座ると、「それができないの!」となぜか怒られる。
まあ面接はほんと、凪が言うように練習するしかないだろ。
「つーか専門って、大半が推薦で受かるんじゃねぇの?」
いただきますと4人で言ってから箸を手に取り、味噌汁を口に含む。
「そうだって聞いたけど……受け答えがダメすぎて落とされるかと思うと……」
暗くなる有須にどうしたもんかと思っていると、右に座ってる彗が彼女の名前を呼んだ。
有須と彗に挟まれてる俺は少しのけ反って、ふたりが顔を合わせやすいようにする。
「面接官を、俺だと思えばいいよ」
彗の隣で飲み物を飲んでいた凪が盛大に咽て、俺は急速に居心地が悪くなる。
「え、えっと……それは余計、緊張するかも……」
バカップルに挟まれる俺の気持ちを察してくれるのは、凪だけだ。