僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「まあ……あと1ヵ月もないけど、頑張ろうね」
まだ軽く咽る凪が言うと、有須は強く頷いた。
「みんなも勉強、頑張ってね!」
そんな有須の言葉で暗くなるのも、凪だけ。
「早く開放されたい……勉強撲滅……」
今日はたまたま休みだけど、夏から予備校に通い始めた凪の口癖はこれだ。
人一倍勉強しないと合格圏外の大学を、凪は受験する。
担任には止められていたけど、それでも受験すると言い放った凪の成績は上がり続けているものの、油断はできないらしい。
「凪、大丈夫だよっ! 楽しいこと考えれば、ねっ!」
「最近そればっか考えてるよ……。もう、受かったら絶対遊びほうけるんだから……」
「受験生の鏡だなぁ。落ちたら指差して笑ってやるから安心しろ」
バキッ!と箸が折れたような音が聞こえたのは、気のせいだと思っておく。
「絶対受かって、土下座させてやるからね……」
「それは頼もしいな」
フッと鼻で笑うと、隣にいた彗も笑った。
「大丈夫。受かるよ」
彗の言葉は凪にとって甘い菓子のようなもので、ストレス軽減にもなって、やる気アップの薬にもなるんだろう。
「知ってる」
そんな風に言えるなら、凪はまだまだ頑張れる。そんな凪を見て、俺も、有須も、彗も、何度だって頑張ろうと思う。
高校受験の時とはまた違う、自分の人生を考えて出した進路。
例え受かったとしても、それはまだ通過点で、終着点はまだまだ遠い。
幾度もスタート地点に立っては、ゴールを目指して、また違うスタート地点に立つ。
そんなことを繰り返していくのが人生なら、なんて面倒なんだと思うのも本音だけど、楽しまなければ損かもしれない。
嫌になることも、愚痴が出ることもあるだろうけど。結果、楽しかったなと言える人生を送りたいと思う。
そう思えば、春が待ち遠しくなった。
――卒業まで、あと半年。
俺たちは笑顔で、このマンションを出る日を迎えられるだろうか。
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