僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「そもそも4人分の家具とか荷物を一気に運ぼうとしたのが間違いだったよね。あの日を思い出しただけで、疲れるよ」


ダイニングデーブルに付属された椅子に腰かける大雅先輩が言うと、キッチンで手を洗っていた凪が顔をしかめる。


「荷物は纏まってたんだからいいじゃん。そりゃ、別々の引っ越し業者がリビングに溢れて、ちょっと混乱したのは申しわけなかったと思うけど」


3月末日の今日から、約1週間前。あたしたち7人の他に、業者の人たちが数十分差で来てしまったのは記憶に新しい。


歩くスペースもないし、ベッドやテーブルを運び出す時なんて大混乱だった。


そこは業者の人たちがプロ根性を見せてくれて、テキパキと順に運び出してくれたんだけど……すごく迷惑だっただろうなぁと思う。


「あれやな~。ああいうのを、ブロッキングミスって言うねんな!」

「それを言うならブッキングミスだよ。バカじゃないの?」

「きー! チカのくせに! 相変わらず生意気やな!」

「はいはい、ふたりともやめてよ。あれはあたしたちのミスだから」


キッチンから出てきた凪が遊志先輩の背中を叩くと、バルコニーから祠稀と彗も出てくる。


「なー。もう掃除終わったんだろ? 腹減った。飯にしようぜ」

「……同じく」


ゴム手袋を外しながら、ふたりが同時にお腹をさする姿に笑った。


手を洗おうかとキッチンに入った瞬間、祠稀の「は!?」という声。


「おまっ……差し入れで飲み物だけって!」

「やだなぁ、ゴミが増えるかと思っての配慮だよ?」

「ホント、つくづく使えねぇ奴ってのは大雅のことだよなぁ」


手を洗いながら、相変わらず笑顔でお互いに毒づくふたりに苦笑する。


でも、お昼ほんとにどうしようかな。


そう考えて流れ落ちる水を止めると、祠稀の「アレだ」と何か思いついた声に顔を上げた。


「近くのファミレスでいいだろ」


ニヤリとなぜか口の端を上げる祠稀に、嫌な予感がする……。


「ああ、そこでええやん」

「ちょっと遊志黙って!」


凪に怒られた意味が分からない遊志先輩が泣くふりをしても、あたしを含めて凪も彗も祠稀の何か企んだ笑顔から目が離せない。
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