僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「最後にファミレス着いた奴が、全員の飯代出すゲーム」
「え!? なんなんそれっ」
「やっぱり……」
遊志先輩が驚いて、凪がガックリと肩を落とすと、彗がすぐに「よーい……」と言った。
え、え、もう!?
「どんっ」
「出たよ彗のマジ走り! 待てコラ!」
「ちょっと! なんでこんなことしなきゃいけないのよ!!」
「え、え、みんな財布は!? 持ってるの!?」
あたしの言葉も虚しく、彗を筆頭に祠稀と凪、追いかけるように遊志先輩まで飛び出して行ってしまう。
「僕も行こーっと。ちゃんと鍵閉めてきなよね」
寝転んでいたチカが立ち上がり、ヒラヒラと手を振って走ることもなくリビングを去っていく。
なんか……チカって、楽するのうまい……!
「……有須は」
「わっ! ……あ、ああ、大雅先輩……行かなくていいんですか?」
「その言葉そっくりそのまま返すよ」
フッと笑う大雅先輩は、焦った様子なんて全くない。確かに、こういう騒がしいことに参加しない人だよなぁと思う。
「あたしは鍵を閉めなきゃいけないので、最後になっちゃいます」
「盗られるものなんて何もないのに?」
「その通りなんですけど……一応、凪の鞄とかありますし」
言いながらキッチンを出て、自分の鞄の中からハンカチを取り出す。手についた水を拭いながら、鍵も財布も入ってる鞄ごと持っていったほうがいいなと考えた。
「変わらないよね。君たちって」
「え?」
「1週間ぶりだっていうのに、やることなすこと変わらないねって」
「……そう、ですね」
ハンカチをしまって鍵を探すと、ほんの僅かな切なさが楽しかった気持ちを掠め取る。
あたしたち4人がそろうのは、1週間以上前、この家を空っぽにして以来。
たった1週間ぶりなのだから、変わりないことは当たり前で。だけど今日が終わってしまえば、この家に戻ってくることは、もうない。
二度と、この家にみんながそろうことはないんだ。