僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
先に降りた大雅先輩の背中を見ながら、少し後ろをついて歩いた。
ロビーを突き進んでマンションの外へ出ると、エントランスで立ち止まった大雅先輩が振り返る。
「嫌いだし、楽しくなかったけど。その場にいても別にいいかって思ってたくらいだよ、俺は」
爽やかな笑顔で捻くれた言葉を発する大雅先輩に、あたしはやっぱり返す言葉が見つからない。
堂々と嫌いだと言われて、だけど一緒にいてもよかっただなんて。
「俺のこと、歪んでるなぁって思ったでしょ」
「いえ……や、……はい、すみません……」
あまのじゃくだなって、思いました。
「残念ながら俺には有須みたいに、寂しいって思う気持ちなんてないよ。何が楽しいかも分からないのに。……ただ君たち4人がそろうところを見られなくなるのは、つまらないと思うけど」
「……じゃあ、大雅先輩はあたしたちといるのが楽しかったんじゃなくて、面白かったんですね」
そう言うと、大雅先輩は目を丸くさせてからくすくすと笑う。
「そうだね。4人の関係がいつまで続くのか、いつ壊れるのかって思いながら見てるのは面白かったよ」
またそんな風に言う。
少しムッとすると、大雅先輩は目を細めるだけで何も言わない。
「見てるだけで、何もしてこなかったじゃないですか」
「何かしてほしかったの?」
「……そういうわけじゃないですけど……」
ただあたしは、実際、2年と半年もないけど……大雅先輩はあたしたちと過ごして、楽しかったかと思って。
遊志先輩と異母兄弟だから、家の事情とか、これからのこととか。表には全く出さなかったけど、大雅先輩にもきっと色々あって、これからもあるんだろうなって思って。
それでもあたしたちと過ごした時間が、少しでもこの人の胸に残るものであればいいなって思っただけなんだ。
「悪い子だね、有須。俺のことまで考えてたら、彗くんが気を悪くするんじゃない?」
笑顔を絶やさない大雅先輩は本当にいまいち何を考えてるか分からない人。
だから、春風で乱れたあたしの髪に大雅先輩が触れても、反応が遅れてしまった。