僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「有須のことは変わらず好きなんだから、気をつけないと」
失礼なほど勢いよく1歩後ろに下がると、よく伸びた笑い声に顔が赤くなった。
「冗談だよ。有須のことは変わらず好きだけど、特別何かしようとは思ってない。伝える術もいまいち分からないし、何より自己完結してるから。まぁ、別にいいかって」
……思いっきり伝えられてるし、そんなこと言われてもどうすればいいか分からない。
困ってるのが顔に出てるのか、大雅先輩はおかしそうに笑うだけ。
あたしが自分で撒いた種で間違いないのに、彼をずるい人だと思う。憎めない人だと思う。
「さっきも言ったでしょ。俺はその場にいるだけでよかったんだよ」
凪と彗のように、遊志先輩とずっとふたりだった大雅先輩は、あたしたち4人の関係を壊したいと言っていた。
人間なんて、人間なんてって、卑下して疑うことで生きてきた人。
嫌いになったし、許せないと思った。だけど向き合うと、逃げないと決めて、今がある。
4人でいることは当たり前だったけれど、大雅先輩と遊志先輩がいるのも当たり前だった。
「遊志もそうだよ。しつこく凪ちゃんを追いかけてたけど、本気で振り向いてほしかったわけじゃない。ああいう……凪ちゃんがいて、他のみんなもいる関係が遊志は楽しくなってたんだよ。どうでもいい話だけど」
……それは、なんとなく分かるなぁ……。
遊志先輩は本当に凪が好きだなと感じるのと同じくらい、彗と祠稀といて楽しそうだと思っていた。
対照的に、大雅先輩はいつも1歩引いた感じでいたから、そういう人だと分かってはいても気になってたんだ。
大丈夫かなって、以前の大雅先輩に戻ってしまわないかなって、考えてしまう。
あたしたちが大雅先輩の中でそんなに大きい存在なのかって言ったら、ものすごく微妙なんだけど……きっと尋ねても答えてくれない。
だから余計に、願ってしまうんだ。
みんなと過ごした時間がこれから先、少しでも糧になるように。
離れてしまっても、簡単に逢えなくなっても、いつかまた繋がるんだと思ってくれればいいなって。