僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「何にせよ、有須に心配されるようなことは何もないよ。俺はそのうち有須のことは忘れると思うし、一生好きだと思うなんて言わないし、そんなのはまっぴらご免だからね」
サラッと、なんて爽やかな笑顔で言うんだろう……。
「でもあたしは、人生初の放課後デートは一生忘れないと思います」
言いながら、あたしが1番言いたかったのはこれだったのかもしれないと感じた。
「忘れないです……あの日はすごく、素敵な日だったから」
大雅先輩は口を開きかけて、言葉を呑み込んでしまう。代わりに困ったような笑みを見せられて、じわりとまた何かが胸の奥で滲んだ。
「そろそろ行ったほうがいいね。もう全員店に着いて、注文までしてそうだし」
立ち止まっていた脚を大雅先輩は動かして、あたしも黙ってそれに続く。ファミレスまで徒歩で10分程度。
話題は変わって何か話すかと思ったんだけど、大雅先輩もあたしも口を開くことはなかった。ファミレスの入り口前で、大雅先輩が振り返るまで。
「俺も忘れないよ。……多分ね」
「――…」
その言葉にあたしは戸惑うことも泣くこともできなかった。
どういう反応をするのが正しいんだろう。
離れ離れになってしまうことへの寂しさや悲しさは確かにあって、だけどそれすらも跳ね返してしまうような笑顔が、あたしの正解だった。
「有須が先に入っていいよ」
「え、でも……同率ビリですよね?」
「俺が最後でいいよ。お金が出るのは遊志の財布からだからね」
フッと鼻で笑う大雅先輩をなんて人だと思ったけれど、思わず笑ってしまう。
カラン、とドアを開けると音が鳴って、「いらっしゃいませーっ」と店員さんの明るい声が響く。
チカ以外がグッタリとしてるみんなの姿はすぐに見つかって、大雅先輩と席へ向かう。
あたしと大雅先輩に気付いたチカが何か言ったのか、みんなが一斉に視線を投げかけてきた。
そうしてみんな「遅い!」って言いながら、笑顔を向けてくるんだ。
――笑っていよう。
あと数時間後、別れの時が来るその瞬間まで。