僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――――…
「ほんなら、俺ら先帰るわぁ!」
2時間ほど居座ったファミレスを出ると遊志先輩が言って、あたしたち4人は僅かに戸惑う。
「あれ? そこは笑顔でまたね~っやろ! なんなんその反応!」
「遊志なんかが珍しく気を利かせるなんて、誰も思ってなかったからじゃない?」
「僕もそう思う」
「遊志なんかがて! 傷付いた……慰めて凪。できればハグ&チュー希望」
「やだよ」
バッサリと容赦なく断る凪に遊志先輩はやっぱり泣き真似をして、大雅先輩と祠稀がめんどくさそうな顔をした。
……でも本当に意外。遊志先輩がいちばん駄々をこねそうだったのに。なんて失礼か……。
大雅先輩を盗み見たはずが、合ってしまった目に肩を跳ねさせてしまう。そんなあたしに大雅先輩は笑ったけれど、声はかけてこなかった。
「じゃ、俺たちはこれで。遊志くっ付かないでウザいから」
「ええやんかぁああ! 寂しいねん! 慰めてぇな!」
ガッ!と大雅先輩に顔面を鷲掴みにされ、強制的に遊志先輩は歩かされてしまう。
そんなふたりを見て盛大な溜め息を吐いたチカは、あたしたちに向き直った。
あたしと、凪と、彗をひとりずつ見てから少し俯きがちになったチカを見て、ああ、お別れなんだなと思う。
「じゃあ、元気でね。……僕も頑張るから、凪たちも頑張って」
あたしたち4人の中で唯一、祠稀だけがこの街に残る。だからチカとお別れをするのは、3人だけ。
「……またね、チカ。勉強頑張ってね」
「たまには連絡してよね。お姉さんが愚痴でも聞いてあげるよ」
「祠稀と、仲良くね」
あたし、凪、彗が順にそう言うと、チカは微笑んでくれた。
出逢った頃よりずいぶん大人っぽくなったけれど、かわいいと感じる満面の笑みは変わらない。それを最後に、チカはあたしたちの前から去っていく。
「なぁーぎぃー! むっちゃかわいいデコメ送ったるからーー!」
大雅先輩に引き摺られるようにして歩く遊志先輩の突然の大声に目を見張って、凪がすぐに吹き出した。
「むっちゃ好き! 有須ちゃんと彗も好きやでー! 祠稀は嫌いじゃボケェェエ!!」
大雅先輩に頭を殴られたのが遠目でも分かって、あたしと彗も笑って手を振った。