僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「アイツは本当にただのバカだな」
「そうでなきゃ遊志じゃないでしょ」
祠稀と凪が笑いながら言うと、あたしたち4人は自然と脚を前へ出す。
赤みがかかったオレンジを連れてきた空は、黄昏時と言うにはぴったり。
どこまでも拡がる夕焼け空は、どこまでも繋がっているんだと思うと、少し泣きたい気持ちになった。
軽くも重くもない足取りはマンションへ近付くたび震えるようで、どうして10分しかかからないファミレスに行ってしまったんだろうと思う。
マンションに着いて、エレベーターに乗るまで、あたしたちは何か会話をしたかもしれない。だけどどれも頭に残らず、遠くへ消えていくだけで。
時間が迫る。無情にも時は刻まれて、心臓は拍動を繰り返し、あたしの気持ちなんてお構いなしだ。
いつまで。いつまで?
あとどのくらい、残された時間はどのくらい?
あたしたちが一緒にいられる時間は、数十秒、数分、数十分?
「たっだいまー!」
ガチャッとドアを開けた凪が言って、いつもと変わらず部屋の中へ入っていく。彗も、祠稀も……あたしも。
「彗、新幹線の時間何時だっけ」
「……あと2時間もないかな」
リビングへ入ると、ダイニングテーブルに付属された椅子しか座る場所がないあたしたちは、立ったまま会話をする。
「有須も同じくらいだよね?」
「あ、うん。あと2時間、かな……」
腕時計を見ながら告げると、凪は少し考える素振りを見せてからダイニングテーブルに置いてある袋へ手を伸ばした。
「大雅がくれた飲み物、持ってきなよ……って、全部お茶か!」
「わざとだろ。あと俺、掃除道具持って帰りゃいいんだよな?」
「あ、そうそう。よろしく」
祠稀が緑茶の缶を2本受け取ると、あたしと彗にも凪は差し出してくる。
「ありがとう」
「……緑茶やだ」
「わがまま言わないで持っていきなさい!」
笑顔でもらったあたしとは反対に、彗は凪に怒られながら嫌そうに受け取った。凪は自分の分も鞄に押し込んで、きょろきょろと辺りを見渡す。
他に何かあったか、忘れ物はないか、そんな感じで。
――分かってる。
ちゃんと、気付いてる。