僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「夕飯作るね」
「あ、手伝うよ!」
今にも寝そうな彗にあたふたしていた有須が、あたしを見上げて言う。
「大丈夫。彗の相手でもしながら、ゆっくりしててー」
「……うん、ありがとう……って、もう寝てる?」
テーブルに突っ伏した彗に、有須が首を傾げて様子をうかがっている。
その光景が微笑ましくもあって、キッチンに向かいながら笑ってしまった。
今日は鶏肉使うかな。
有須のために考えた低カロリーのレシピも、だいぶ増えて作れるようになった。
「げっ! 何寝てんだよ彗! 起きろ!」
冷蔵庫の中身を見ながら材料を取り出していると、祠稀が戻ってくる。
「きゃー! 祠稀っ! 蹴っちゃダメ!」
乱暴な祠稀に蹴飛ばされた彗はゆっくりと顔を上げ、ふたりの顔を交互に眺め始めた。
……あれは完全に寝てたな。
ぼんやりする彗に、祠稀は「ゲームすんぞ」と返事も聞かずに準備を始める。そのうちリビングは、ゲームをする3人の声で騒がしくなった。
負けて怒る祠稀に、淡々と受け答えする彗。喧嘩の仲裁に入る有須。
いつもの日常。これが、ふつう。
なのに、気にしすぎだ。
祠稀が自身で揉んだ左肩。
凝っただけだって思ってるはずなのに、重ねてしまう。
短い夏に見た、タンクトップから露出された左肩にある小さな火傷の跡。
いやに生々しい、丸い火傷。
……傷は好きじゃない。
無条件に、悲しくなるから。